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2025.6.11

国内外の事例で見る、テスト自動化“向き不向き”:成功事例と失敗事例

自動テストを導入し、大幅なテスト工数削減や品質向上を達成する企業がある一方で、途中で頓挫してしまう企業も少なくありません。そこで今回は、日本国内だけでなく米国や欧州で公開されている事例やデータを参考に、導入が“うまくいったケース”と“失敗に終わったケース”の両面を見ていきます。成功企業が実践しているポイントや、失敗企業が陥った落とし穴を学ぶことで、自動テストの導入効果を最大化するヒントを得ましょう。

1.成功事例から学ぶ:国内外で明らかになった効果と鍵

1-1.国内ECサイト運営企業:毎回16時間のテスト工数を約2時間に削減

事例概要
日本国内のECサイトを運営する企業(従業員約300名)の例です。年間を通じて頻繁にUI改修やキャンペーン連動の機能追加が行われるため、毎回のリグレッションテストに多大な手動工数がかかっていました。

  • 背景:リリースごとに100~150件のテストケースを手動で実行
  • 導入内容:一部の重点機能(ログイン・認証周りの機能、決済関連のトランザクション機能、メッセージ送受信や通知機能)を影響度の高い主要機能に絞った
  • 結果とポイント
    • 効果:リグレッションテストの時間を16時間から約2時間に削減
    • 成功の鍵:
      • スモールスタート:まずは影響度の大きい3機能のみを自動化してPoC実施
      • スクリプト管理の徹底:UI変更に備え、テスト設計をページオブジェクトモデル(POM)で統一

1-2. 米国大手SNS:1日数回のデプロイと高品質維持の両立

事例概要
米国発のSNSサービスを展開する大手企業。独自のDevOpsパイプラインを構築し、1日に数回のデプロイが行われる体制をすでに確立しています。

  • 背景:機能追加やA/Bテストを高速で回すため、従来の手動テストでは対応しきれず
  • 導入内容:自動テストをGitのプルリクエスト段階から実行(CI/CDと完全連携)。UIテスト・APIテストともに統合的に管理
  • 結果とポイント
    • 効果:不具合の検出が“本番リリース前”ではなく“開発ブランチ統合前”に実行されるため、バグ修正コストが約30%削減。
    • 成功の鍵:
      • CI/CDパイプラインとの統合:テストが自動で走る仕組みを標準化し、エンジニア全員が同じルールに従う
      • テストデータ管理の自動化:DBを都度リセット&サンプルデータを流し込み、どの端末や環境でも再現性の高いテストを実行
      • テストカバレッジの可視化:コードカバレッジツールと連携し、エンジニアが自分の変更箇所に対して十分なテストが書かれているかを把握しやすくした

1-3. ヨーロッパの旅行予約サイト:PoCで得た実績が全社展開のトリガーに

事例概要
ヨーロッパを拠点に複数言語対応の旅行予約サイトを運営する企業(従業員約500名)。国・言語ごとのUI差異が大きく、手動テストに膨大な時間を割いていました

  • 背景:各国向けに週1回のUI更新 → 手動で毎回2日間のリグレッションテスト
  • 導入内容:PoCとしてAppiumを導入してモバイルアプリの主要フローを自動化し、クラウド上AWS上に仮想端末を用意。PoC結果を数値化して役員に報告
  • 結果とポイント
    • 効果:PoC対象の予約フローでテスト実行時間を約70%以上削減、リリース遅延のリスクも激減。これを受けて本格的にデスクトップWeb版・タブレット版へ対象を拡大し、さらなる効率化を進めた。
    • 成功の鍵:
      • PoC結果を数値で示す:削減工数や検出バグ件数を定量的に提示
      • 内部エバンジェリスト:自動テストの導入を積極的に推進する担当者が社内でワークショップを開催し、現場への浸透を図った
      • ローカライズ対応:UI要素やテストデータを国・言語別に切り替えやすくする設計を最初から意識

2.失敗事例から学ぶ:導入が頓挫する企業の落とし穴

2-1.国内製造業系SI企業:運用担当不在によるスクリプトの管理不足

事例概要
日本国内の製造業向けシステムインテグレーター。自社プロダクト開発に自動テストを導入しようとしたが、1年ほどでメンテナンスされないスクリプトが乱立し、結局は再び手動テストに戻ってしまった。

  • 背景:リリース前のテスト工数を大幅に削減したい思惑があったが、運用体制や責任者を決めずにスタート
  • 原因
    • テストスクリプトの所有者が不明確:UIが変更されても誰もスクリプトを修正しなかった
    • 自動テスト実行の結果レポートを誰が分析するか決めておらず、放置状態

2-2. 米国のスタートアップ:ツール選定ミスマッチでコスト増大

事例概要
米国内のスタートアップ企業。投資家からの要請もあって「とりあえず最先端ツールを導入する」方針で大規模投資を行ったが、半年後には開発チームが使いこなせず放置状態に。

  • 背景:スポンサーからの「もっと自動テストをやって先進的な印象付けをしたい」という圧力があり、社内合意やツール選定等が曖昧なままテスト自動化を導入
  • 原因
    • ツール導入に関する社内合意形成不足 → QAチームが慣れないツールに戸惑う
    • スタートアップ特有の頻繁な機能変更 → 高度なテストスクリプトほどアップデートが追いつかない
    • 結果として、高額なSaaSライセンス費が重荷になった

2-3. ヨーロッパのITサービス企業:ROIを示せずにプロジェクト終了

事例概要
ヨーロッパに本社を持つITサービス企業。複数の拠点で自動テストを導入するプロジェクトを立ち上げたが、経営層に導入効果をうまく共有しきれず1年ほどで終了。

  • 背景:最新のレポートなどで「自動テストはROIが高い」とされている一方、具体的にどの領域で、どのタイミングで費用対効果が出るかを可視化できなかった
  • 原因:
    • PoCを行わず一気に全体導入しようとした → 初期コストが膨大に
    • 成果指標を設定しなかった → 「実際にどのくらい効果が出たのか」を定量的に説明できず、上層部がプロジェクトを打ち切り

3. 成功と失敗を分けるポイント:共通のキーファクター

成功企業の多くは、「すべてを自動化する」のではなく、向いている領域とそうでない領域を見極めた上で導入を進めています。これは“テスト自動化の8原則”にも通じる考え方で、ROIが高い部分から段階的に始めることで、より確実なメリットが得られます。

  • 明確な目的設定と対象範囲の優先順位づけ
    • 成功企業:売上やリリースサイクル、品質リスクなどを踏まえ、どの機能・範囲から始めるかをあらかじめ決めていた
    • 失敗企業:“何となく流行っているから”だけで広範囲に手を出し、成果がぼやけてしまった
  • 運用体制と責任者の明確化
    • 成功企業:テストスクリプトのメンテナンス担当、定期的なレビュー体制、レポート分析役などを明確に割り振り
    • 失敗企業:作ったスクリプトを誰が修正するのか・結果を誰が見るのかが不透明。PoCなどの小さな成功事例を早期に可視化
    • 成功企業:2~4週間の短期テストで成果を検証し、数字を伴って社内に共有 → 追加投資を得やすい
    • 失敗企業:大規模導入を一気にやろうとして、途中でコスト超過かつ成果不明確に
  • 適切なツール選定とチームスキルのマッチング
    • 成功企業:エンジニアやQAが慣れたプログラミング言語やフレームワークを活用し、学習コストを抑える
    • 失敗企業:最先端ツールを大量に導入しても、チームが使いこなせずに無駄が増大
  • ROIを示すための指標(テスト工数、バグ検出率など)の設定
    • 成功企業:PoC結果やリリース前後のバグ件数など、具体的な数値を追いかけて経営層に報告
    • 失敗企業:成果が定量化できない、もしくは指標が定まらないままスタートし、導入にかかるコストばかり目立ってしまう

4.まとめ:自社に最適な導入計画を立てることが重要

自動テスト導入の“明暗”を分けるのは、結局のところ

  • なぜ導入するのか(目的と目標の明確化)
  • どのようにう導入するか(PoCの有無、運用体制、ツール選定)
  • どのように効果を可視化するか(工数削減やバグ検出率を数字で示せるか)
  • この三つが大きな要素です。
    国内外を問わず、同様の成功・失敗が繰り返されているのは、テスト自動化が単なる"ツール導入"ではなく、“運用プロセスの変革”をともなうからです。PoCを通じて技術的な有効性を検証すると同時に、組織文化やマネジメント課題も踏まえて、導入の価値を包括的に説明できる計画がカギと言えるでしょう。

    「自分たちの現場に合った進め方をどう見極めればよいのか?」 と悩んでいる方は、海外事例や国内事例をさらに学びつつ、まずはPoCを実施して少しずつ試しながら最適解を探るアプローチをおすすめします。当社では、自社に最適なテスト自動化導入について、無料相談会を受け付けております。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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    また、テスト自動化の事例についてはこちらの動画でも解説しています。
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