アプリ開発やサイト制作のスマホ端末実機検証・テスト-Remote TestKit

2025.4.4

いま日本のQA現場で何が起きている? グローバル動向から見る自動テスト導入の最新トレンド

1. 日本のQA現場が直面する現状:リリースサイクルの短縮化と多様化

1-1. リリースサイクルの高速化に追いつけない手動テスト

近年、日本でもアジャイル開発やDevOpsといった手法が急速に広まっています。月1や週1どころか、毎日・数時間単位で新しいビルドをリリースする企業も増え、テスト対象が膨大になる一方です。
例として、2022年のGitLab DevOps Surveyによれば、北米・欧州を中心とした企業の約84%が「コードをコミットするたびに自動テストやビルドが走る環境(CI/CD)を構築している」と回答しており、高速リリース時代では自動化を多くの企業が標準的に活用していることがうかがえます。
一方、日本のQA現場では、これまでの手動テストを延々と継続するケースがまだ多く、短期間でのリグレッションテストが追いつかない状況が頻繁に起こっています。

1-2. 多種多様なOS・端末への対応

スマホアプリ一つを取っても、iOSとAndroidに加え、それぞれのOSバージョンや端末メーカごとのカスタムUIなど、組み合わせは膨大です。
欧米では複数のクラウド実機サービス(BrowserStackやSauce Labsなど)の利用が進み、複雑な端末検証を自動化している事例が多く見られます。
2022-23年版のWorld Quality Report(Capgemini, Sogeti, Micro Focusなどが共同発行)では、「大規模なアプリ開発を行う企業の約78%がクラウド上での自動テスト環境を導入済み、または導入を検討中」と報告されており、マルチデバイス対応の大半をクラウド環境に移行している実態が示されています。
日本国内でも同様のニーズは非常に高まっていますが、全端末を自社で保有するには費用も手間もかかりすぎるため、クラウド利用や自動テスト連携の必要性が日に日に増している状況です。

2. なぜ自動テストがこれほど注目されるのか

2-1. 高速リリースと品質担保の両立が必須

海外ではNetflixやSpotifyといった大規模サービス事業者が、「1日に何度もリリースする」体制を早くから確立し、その際に自動テストを徹底活用してきた実績があります。手動テストだけではもはや検証しきれないほどの機能追加やバグ修正、A/Bテストが次々に発生するため、自動テストこそがリリース速度を落とさず品質を保つ鍵といえるのです。
日本でも同様のニーズは急激に高まっており、特にリリースごとに機能がガラッと変わるようなサービス(SNS、EC、金融アプリなど)では、自動テストの導入がもはや不可避になりつつあります。

2-2. クラウドインフラ・ツールの充実

かつては自動テスト導入にあたり、「端末管理」「ツールのライセンス費用」「サーバ環境構築」などのハードルが非常に高かったのですが、近年はクラウド環境の急速な整備により、初期投資を抑えつつスモールスタートが可能となりました。
たとえば米国のBrowserStackやヨーロッパのSauce Labsなどでは、数百〜数千種類の端末・OS環境をクラウドで提供し、AppiumやSeleniumのようなオープンソースと連携可能です。日本国内でも同様のサービスを提供する企業が増えており、少ないコストで「とりあえず試してみる」動きが活性化しています。

2-3. テストエンジニアの役割変化

欧米のQAエンジニアを中心に広まっている考え方のひとつに、**「テスト自動化はスクリプトを書いて動かすだけではなく、テスト戦略全体を再設計することが重要」**という点があります。
単純な繰り返し検証を自動化に任せることで、QAエンジニアは探索的テストやリスク分析など、より高度な品質保証業務に集中できるようになります。日本の現場でも、「開発とQAの連携を強め、全体の品質向上を図る」という発想が徐々に広がり始めています。

3. 日本特有の課題:言語の壁、組織文化、予算取り

3-1. 言語・情報量の課題

海外ブログやドキュメントを読む必要があるケースが多い一方で、英語のドキュメントになじみの薄いエンジニアには敷居が高く感じられがちです。最新のツールはまず英語で公開され、日本語情報が追いつくまでにラグが生じることもしばしばあります。

3-2. 組織文化とリスク回避傾向

日本の企業文化では、失敗を許容しない風土が根強く存在します。このため、新しい技術や手法に対する慎重な姿勢が強く、特に自動テストのようなシステムに完全に依存することに対して不安を感じる企業が多いのです。「自動テストに任せきるのは不安」「もし自動テストが誤作動したらどうする?」という懸念が生まれる背景には、誤作動によるリスクやその影響を最小限に抑えようとする強い意識があります。そのため、米国や欧州のように「まずはやってみて失敗から学ぶ」というカルチャーに比べ、導入意思決定が慎重になる傾向があるのも事実です。

3-3. 予算承認の壁

海外のSaaS型テストサービスやコンサルを利用する際、料金体系がドルやユーロ基準で割高に感じられるケースもあります。また、IT予算の決裁権限が分散しており、部署間の調整に時間がかかることも日本企業特有の課題です。

4. 高速化が進む世界で、日本企業が生き残るために必要なステップ

4-1. 小さなPoC(概念実証)から始める

欧米のブログや事例でも共通して挙がるのが、「大規模な自動テスト導入は最初から目指さず、PoCで小さな成果を実証する」アプローチです。たとえば、全テストケースの中からビジネスインパクトの大きいシナリオ数本だけを選び、クラウド実機サービス×Appiumを使って自動化してみる。その効果を社内で共有し、成果が数字で見えれば、さらなる導入拡大の説得材料になります。

4-2. 継続的インテグレーション(CI)との連携

2022年のGitLab DevOps Surveyでも、「CI/CDの導入度合いが高い企業ほど、QA・セキュリティ問題の早期発見率が向上している」と報告されています。単発で自動テストを動かすだけでなく、ソースコードの変更があるたびに自動テストを回す仕組みを整えることが、品質向上とリリーススピードを両立させるためのカギです。

4-3. 失敗事例から学ぶ

海外事例でも、自動テストの失敗原因として「テストスクリプトのメンテナンスが追いつかず、放置されたテストが増える」「ツールの選定ミスマッチでコストばかりかかる」などのケースが見受けられます。

  • スクリプトの保守性やテストケースのアップデート方法を明確化していないと、テストがすぐに陳腐化してしまう
  • ツール導入前に実際のプロジェクト要件に合った機能を確認しなかった結果、高額なライセンスを無駄にしてしまう
  • 5. まとめ:世界の潮流を踏まえたうえで、自動テストの一歩を踏み出そう

    欧米のブログや業界レポートを見ると、自動テストはもはや「やるかやらないか」ではなく「どこまで徹底的にやるか」の段階に突入しています。日本でもアジャイルやDevOpsが普及している以上、従来の手動テストだけでは対応しきれない局面が確実に増えていくでしょう。

    ポイント
    1.端末・OSの多様化:クラウドサービス活用で解決の糸口を探る
    2.高速リリースの圧力:自動テスト+CI/CDパイプラインで早期検知と品質向上
    3.文化・組織的ハードル:PoCによる実証と小さな成功体験の積み上げ
    4.海外事例の取り込み:英語圏・欧州のブログやレポートを参考に最先端の知見を学ぶ

    本連載では、次回以降、実際にどのようにステップを踏んで自動テストを導入していくのか、どんなツールが使われているのか、具体的な成功事例・失敗事例をさらに深掘りしていきます。
    もし「自動テストには興味があるけど、どこから始めればいい?」「海外事例をもっと詳しく知りたい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。海外ツールとの連携事例やクラウド実機サービスの導入事例など、多数のナレッジをご提供できる体制を整えています。

    参照

    capgemini,Quality Report 2022-23,https://www.capgemini.com/service/world-quality-report-2022-23/
    GitLab,GitLab DevOps Survey 2022、https://about.gitlab.com/developer-survey/

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