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2025.5.13

自動テスト導入ステップを理解する:海外事例に学ぶプロジェクト成功への道筋

1. なぜ導入ステップを明確にする必要があるのか

1-1. “とりあえずやってみた”だけでは失敗しやすい

海外での導入失敗例をまとめた2022年のWorld Quality Report(Capgemini, Sogeti, Micro Focusなどが共同発行)では、「自動テストを導入したものの活用が進まず、1年以内に稼働停止」に至る事例については、いくつかの報告や議論からの理由として、「テストスクリプトのメンテナンス体制が整っていない」、「全体の方針が曖昧で誰が責任を持つか不明瞭」ということが背景にあると読み取れます 。“まず試してみる”ことは大切ですが、明確な目的や段階的な導入計画を欠いたまま走り始めると、運用コストだけがかかって効果を発揮しないという事態につながります。

1-2. 小さな成功体験が次の投資を呼び込む

全自動化から始めて失敗した事例として、米国のとある大手Eコマース企業(従業員数1,000名規模)では、導入初期に全テストを一気に自動化しようとして混乱の末、当初の方針はうまくいきませんでした。
しかし、 半年後に「まず売上に直結する会員登録・カート結合部分だけを対象にPoCを行う」方針へ軌道修正。すると、カート機能のリグレッションテストにかかっていた月80時間の手動工数が月10時間以下に削減され、年間で約840時間分の作業コストを削減につながったとされるケースもあるようです。こうした成功体験と数字が生まれた結果、社内で追加予算が取りやすくなり、自動テストの範囲拡大が一気に加速したようです。

ステップ1:導入目的と範囲を明確化する

2-1. ビジネス目標・品質目標との紐づけ

たとえば、アジャイル開発のリリースサイクルを2週間ごとに回すために、リグレッションテストの工数削減を狙うのか、重要なECサイト部分のテストだけを切り出して、売上へのインパクトを最大化するのか、といった目的を明確にすることが重要です。
米国のソフトウェア企業向けブログでは、「『最新トレンドだから』という理由だけで導入すると、社内でのコンセンサス形成が困難で失敗する」と警鐘を鳴らす記事がしばしば見られます。ビジネス面・品質面・チームの運用面といった複数の視点で導入目的を明確化し、その優先度をはっきりさせる作業が重要です。

2-2. リスクとコストを見極める

具体的なツール導入やクラウドサービス利用を決める前に、下記のようなチェックリストを用意し、自動テストで得られるリターンと想定コストを整理しておくと、導入後の不安要素を大幅に減らせます。

テスト対象システムの頻度・重要度

  • リリース頻度が高いか?
  • 売上やブランドイメージに直結する部分か?

  • チーム内のスキルレベル
  • 自動テストの知見を持つメンバーがいるか? プログラミングスキルのレベルは?

  • ツール費用・クラウド利用費
  • ツールのライセンスモデルや端末利用にかかる従量課金の見積もりは?

  • 社内調整コスト
  • 開発・QA・運用チーム間の連携体制。導入承認までのステークホルダーは誰か?

    <関連記事はこちら>失敗しないテスト自動化の導入ステップ:企業の成長を支える効率化戦略

    3. ステップ2:PoC(概念実証)から小さく始める

    3-1. 絞り込みのポイント

    海外ブログでも頻繁に紹介されているベストプラクティスに「PoCで効果を検証する」という手法があります。対象を限定し、短期集中でスモールスタートしつつ、得られた成果を定量化するのが狙いです。

    対象例:ユーザーログイン、カート機能、支払い関連など、ビジネスインパクトが大きい or 頻繁に改修される機能
    期間:2〜4週間程度の短期スプリントを設定し、実際にクラウド実機サービスやツールを動かしてみる

    3-2. 海外事例の具体的成果

    米国のモバイルゲーム開発会社:
    リリース前の回帰テスト(約200ケース)を手動テストから自動テストに置き換え、PoC後の1ヶ月でバグ検出率が15%向上したという報告もあるようです 。「曖昧なテスト手順が減り、テストカバレッジが明確になった」というのが主な理由とされているようです。

    ステップ3:本格導入時のプロセス設計

    4-1. CI/CDパイプラインとの連携

    PoCで成果(*)が認められたら、次は本格導入に向けて継続的インテグレーション(CI)と組み合わせることを検討します。
    (*)近年ではテスト戦略や観測性の強化など総合的な評価が求められています

    GitLab DevOps Survey 2022によると、CI/CDを導入している欧米企業の約75%が自動テストをパイプラインに組み込み、コードのマージ前に自動テストを必須化しているそうです。
    コードがコミットされるたびにテストが走るため、早期に不具合を発見でき、リリーススピードと品質の両立が実現しやすくなります。

    4-2. メンテナンス体制とスクリプト設計

    自動テストは「作ったら終わり」ではなく、継続的なメンテナンスやテストケースのアップデートが不可欠です。

  • ページオブジェクトモデル(POM)などの設計パターンを導入する
  • UIが変更されてもスクリプト全体を大きく書き換えずに済むようにする

  • メンテナンス担当を明確にし、スプリントごとにスクリプト更新を行う運用ルールを定める
  • 欧米のテスト自動化ブログでも、メンテナンス体制が未整備でスクリプトが放置される「テストが壊れても誰も修正しない」状態に陥ってしまうパターンがよく指摘されています。持続的に活用するにはスクリプト管理こそが肝要です。

    ステップ4:社内外への情報共有と継続的改善

    5-1. 導入成果を“見える化”

    成功体験をチーム内・経営層にきちんと共有し、次の投資や改善のアイデアにつなげることも重要です。

  • 工数削減率:PoC前後での手動テスト実施時間の比較
  • バグ検出率:リリース後に発生する不具合件数の推移
  • リリースサイクル短縮:リグレッションテストに要する日数・時間の変化
  • 売上損失額の減少:エラー率(%)とその影響による売上損失額
  • ここで具体的な数値(たとえば「手動テスト80時間→10時間」「年間840時間削減」というような実績)を示すと、上層部からの予算確保や新規ツール導入の承認が得やすくなります。

    5-2. 外部知見の活用

    海外のコミュニティや技術ブログでは、同じツールや同じ業界での成功・失敗事例が共有されていることが多くあります。英語情報へのアクセスが難しい場合でも、翻訳ツールや専門家に相談して要点だけでも定期的に把握すると、最新のトレンドを取り逃がさずに済みます。

    まとめ:段階的に導入し、小さな成功を積み重ねる

    自動テストの導入には、手間やコストが伴います。ですが、海外の事例や数値を見てもわかるように、PoCから始めて効果を証明し、そこからCI/CDへの統合を進めるステップをしっかり踏めば、
    ・大幅なテスト工数削減
    ・バグ検出率の向上
    ・リリースサイクル短縮によるビジネス機会の創出
    といった成果を得ることが十分に可能です。
    本格導入の際は、誰がどのようにメンテナンス・運用するか」という役割分担まで含めて計画しておくことが、海外先進企業の成功事例から学べる最大のポイントだと言えます。

    次回予告

    第3回:実例で学ぶ成功事例と失敗事例:他社のテスト自動化から得られるヒント
    「スモールスタートから全社レベルまで導入を拡大する企業があれば、途中で頓挫してしまう企業もあります。その明暗を分けるポイントを、国内外の具体的事例を交えて解説します。

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