
金融アプリのテストは、手元のスマートフォン・エミュレーター・デバイスクラウドのどれで行うべきか?
銀行や金融機関のスマートフォンアプリは、我々の日常生活に広く浸透しています。しかし、アプリ開発時に不具合を見逃していた場合、アプリにエラーが発生し、ユーザーの不信感を招きかねません。そのため、開発段階で厳密なテストを実施し、リスクを可能な限り排除しなければなりませんが、一方で検証のためのコストは、できれば安く抑えておきたいところです。そこで重要になるのが、スマートフォンのテストにおけるコストの最適化です。本稿では、①手元のスマートフォン、②エミュレーター、③Remote TestKitのようなデバイスクラウドの3つのテスト方式において、それぞれどのようなコストが発生するのか、最もコストが安く済むのはどの方法なのかを解説します。
見出し
アプリ検証のコストは、利用料だけで判断して良いのか?
金融機関が一般ユーザー向けに提供するアプリケーション(以下、金融アプリ)をリリースする際は、他の業界のアプリ以上に、綿密なテスト(検証)が欠かせません。金融アプリは顧客の大切な金銭を取り扱う以上、エラーの発生はそのまま金融機関の信用問題に発展しかねません。
そのようなエラーを抑えるためのテストの方法としては、大きく分けて3つの手法が存在します。
1つ目は、「手元のスマートフォン」を使う手法です。会社が所有するPCやタブレット、スマートフォンなどの実機を使ってテストを実施するものです。
2つ目は「エミュレーター」です。スマートフォンをPCなどの異なる環境で擬似的に再現し、その仮想的なスマートフォン環境において、エラーが発生しないかどうかテストを行うというものです。
3つ目は「デバイスクラウド」です。PCからスマートフォン実機にリモート接続することにより、遠隔地での実機テストを可能にします。
これらテストの方法には、それぞれ特徴があります。たとえば確実にテストを行いたい場合は、手元のスマートフォンやデバイスクラウドの利用が適しています。手元に端末をそろえるのはコストや手間がかかり難しい場合は、エミュレーターで実施することが多いかもしれません。
しかし、ここで注意しなければならないのは、アプリのテストには、単にお金だけでは収まらない、さまざまな要素のコストが存在するということです。
たとえば手元のスマートフォンを使用する場合は、さまざまな機種の端末、さまざまなOSのバージョンに対応した端末を用意する必要があり、それらの端末を適宜アップデートする作業が必要になります。さらには端末の充電や、バッテリートラブル時には電池交換など電池の管理も求められます。端末を購入、またはレンタルにて注文し、手元に届くまでの待ち時間も、広い意味ではコストに含まれます。
デバイスクラウドを利用する場合は、コストとしてサービスの利用料金が発生します。その一方で、OSのアップデートなど端末の管理はサービスの提供会社が行うため、利用者側に作業負担はありません。中にはバージョンをアップデートせず“維持”する端末も用意されているため、特定バージョンのOSを利用することも可能です。加えて、クラウド経由で端末を利用するため、わざわざ端末を調達する手間もありません。
つまり、単純にテスト時におけるコストだけで判断すると、その前後で余計な作業やコスト負担が必要となり、開発や運用の状況によっては、さらにコストや労力が膨らむ可能性もあります。
先に挙げた「①手元のスマートフォン」「②エミュレーター」「③デバイスクラウド」の3つの実行環境のうち、最も「真のコスト」が安く済むのはどれなのでしょうか?以下に比較してみます。
<参考資料>
【無料DL可能】:金融アプリのテスト実行環境は、 結局どの方法が効率的なのか?手元のスマートフォン・エミュレータ・デバイスクラウドを比較!
「手元のスマートフォン物理端末」「エミュレーター」「デバイスクラウド」のコスト構造を調べる
「真のコスト」を比較するうえでは、サービス利用料や商品の購入費のような「直接的なコスト」だけでなく、そのサービスや商品を管理するための「間接的なコスト」、導入後、使用し続けるうちにようやく気付く「見えにくいコスト」の3つに分かれます。こうした3つの観点から、「①手元のスマートフォン」「②エミュレーター」「③デバイスクラウド」における隠れたコストを分析していきます。
1.手元のスマートフォンによるテストのコスト
手元のスマートフォンの場合、直接的コストは「端末の購入費」です。しかも、端末をただ買って終わりではなく、たとえばiPhone Pro/iPhone Pro MAXのように機種のグレード別、OSのバージョン別に購入する必要があります。加えて、購入した機器が故障した場合、バッテリーが劣化した場合には、修理や取り換えの対処を行う必要もあります。
購入した端末を廃棄する際にも注意が必要です。金融業界のセキュリティ基準「FISC安全対策基準」では、スマートフォンを含む情報機器を廃棄する際、情報漏洩を防ぐために、端末内のデータ消去が求められています。同基準では端末を復元不可能な状態にすることに加え、消去のプロセスが実行されたことを客観的に証明する必要もあります。こうした端末廃棄に関する諸費用も、直接的コストのひとつといえます。
間接的コストとしては、端末の保管、テスト後のデータの初期化、台帳管理といった端末管理です。加えて、検証用端末は当然ながら社用となるため、端末の持ち出しはセキュリティの面でリスクがあります。その結果、テストをする際には必ず出社しなければいけなくなるため、即時対応が難しいという課題もあります。
見えにくいコストとしては、特定のOSバージョンを搭載した端末をわざわざ購入する手間や、OSメジャーアップデートのたびに発生する臨時の検証などがあります。加えて、もし端末を社外に持ち出す場合には、紛失しないよう管理の手間も発生します。さらにいえば、テスト中にフリーズや充電切れが発生した場合は、それらの機器を再起動したり充電する手間も発生します。
社内で管理する端末の数が増えるほど、こうした管理コストと、管理のための人的負担は、どんどん膨らんでいくことでしょう。
2.エミュレーターによるテストのコスト
エミュレーターを使用する場合の直接的コストは、エミュレーターソフトウェアの購入費です。ただし、ソフトウェア自体はそこまで高価なものではなく、中には無償で利用できるソフトウェアも存在します。
間接的コストとしては、実機挙動との差異による検証のやり直しが挙げられます。エミュレーターで動作したものが、認証や通信など、実機ならではの環境によって、エミュレーターではうまく再現できない現象が発生するケースも見られます。そのため、結局は端末を導入し、実機検証をせざるを得ません。
こうしたエミュレーターでは再現しなかった市場不具合(リリース後の不具合)は、事後調査工数として、見えにくいコストに反映されます。アプリユーザーの不信を買い、ブランドを棄損させる結果に繋がった場合、その信用を取り戻すことも、広い意味ではコストといえます。
エミュレーターによるテストのコストは、テスト時は安価ではあるものの、その後の工程で発生し、高くついてしまう恐れがあるといえそうです。
3.デバイスクラウドによるテストのコスト
デバイスクラウドクラウドにおける直接的コストは、サービスの利用料です。その料金は利用プランによってさまざまであり、たとえば定額プランや従量課金制のプランもあります。
サービス利用料は必要になりますが、基本的にはそれ以外の費用はかかりません。クラウドであるため初期投資は不要であり、新機種や新OSも随時追加されるため、テストをする側が端末を購入したり、端末をメンテナンスする必要もありません。そもそも端末は手元になくクラウド上に存在するため、管理コストも発生しません。
こうしたことから、デバイスクラウドにおける間接的コストや見えにくいコストは、実質的にはほぼ無いといっても過言ではないでしょう。

<参考資料>
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コストはどれだけ違うのか?「手元のスマートフォン」「エミュレーター」「デバイスクラウド」を比較
これら3つのテスト方式の違いで、実際にどのくらいコストに差が出るのでしょうか?1年間の試算をしてみましょう。デバイスクラウドについては、NTTレゾナントテクノロジーの「Remote TestKit」のFLAT1プランを利用した場合のものです。
※新規端末代金は120,000円/1台、検証センターの利用時間は1日5時間30台、1台あたり30分の検証を想定しています。
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①手元のスマートフォン
端末保有台数:100台
新規購入端末数:120万円(1年間で10台購入と試算)
検証センター利用回数:15万円(1年間で3回と試算)
ソフトウェア購入・サービス利用費用:0円
費用合計:年間135万円
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②エミュレーター
端末保有台数: 0台
新規購入端末数:0円
検証センター利用回数:0万円
ソフトウェア購入・サービス利用費用:0円
費用合計:年間0円
(ただしトラブル発生時は、実機による検証費用が別途発生)
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③デバイスクラウド(Remote TestKitを使用)
端末保有台数: 0台
契約回線端末数:0万円
新規購入端末数:0万円
検証センター利用回数:0万円
ソフトウェア購入・サービス利用費用:60万円
費用合計:年間60万円
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単純に費用合計で見た場合、②のエミュレーターによるテストが最も安い結果となりました。しかし本文でも触れた通り、金融アプリのテストには「真のコスト」が存在します。
エミュレーター単体による検証だけでアプリをリリースしたとしても、ユーザー環境にてエラーが発生した場合、再度実機による検証を行う必要があります。結局は①手元のスマートフォン、③デバイスクラウドクラウドによる検証を行わざるを得ず、手戻りのコストが発生することになります。
①手元のスマートフォンと③デバイスクラウドクラウドで比較した場合、上記の試算ではデバイスクラウドのほうが年間で約55%もコストを抑えることが可能になります。
デバイスクラウドは端末を購入する必要がなく、遠隔地にある実機をクラウド経由で利用するため、端末の購入費は不要であり、サービスの利用料だけで済ませることが可能です。さらにいえば、端末のOSバージョンをアップデートしたり、電池の残量を管理する手間もなくなるため、「真のコスト」を考慮しても、企業の負担が軽減できます。
まとめると、金融アプリのテストには、Remote TestKitのようなデバイスクラウドサービスを利用することで、「真のコスト」を抑えることができるでしょう。
金融アプリの検証は、どの方式で行うのがコスト的に優位なのか?
上記の通り、金融アプリのテストにはデバイスクラウドサービスを利用するのがベストではありますが、もちろん、①手元のスマートフォン実機端末、②エミュレーターのテストに効果がないというわけではありません。それぞれに特性があり、たとえば以下のような状況のテストには向いているといえるでしょう。
①手元のスマートフォン:限定的な実操作確認
②エミュレーター:開発初期の動作確認・自動テスト
③デバイスクラウド:OSアップデート検証、新機種対応、再現性の低い不具合調査などテスト全般に有効
金融アプリでは、不具合の見逃し、調査遅延、リリース判断の誤りが、コスト面だけでは測れないリスクにつながります。そのため、デバイスクラウドを活用することが、トータルとしてのコストを抑えながら、検証の網羅性と再現性確保の近道といえます。逆にいえば、「自社が持っている端末で検証すれば良い」「無料のエミュレーターで検証すれば安くて済む」といったような目先のコストを優先するのでは、かえって検証のコストが高くつく恐れがあります。
しかし、Remote TestKitのようなデバイスクラウドを利用すれば、端末の管理や検証のやり直しなど「見えにくいコスト」を抑えながら、エラーが発生しにくい、安定した金融アプリを作ることができます。
金融アプリのテストには、購入費のようなわかりやすいコストに加え、本記事で紹介したようなさまざまな“隠れコスト”が存在します。こうした隠れコストが少ないツールを選び、効率的にテストを行うことで、作業をよりスムーズに、より確実なものへと変えていくことができ、金融アプリの開発リソースを本業に投入することが期待できます。
金融アプリのテストを行う際には、ぜひRemote TestKitのような隠れコストの少ないツールを選択してみてはいかがでしょうか。
<参考資料>
【無料DL可能】:金融アプリのテスト実行環境は、 結局どの方法が効率的なのか?手元のスマートフォン・エミュレータ・デバイスクラウドを比較!


